女性主人公 犯罪を起こす 作品を紹介

OUT

妻たちが自由を求めて

結末で言えば紙の月曰く、お札で出来た偽物の月は壊したって良いとさえ考えていた梨花の最後は自業自得、という末路を迎えました。ただ不運なことは、光太という少年と出会わなければ平凡で、夫と仲良く暮らせていたのではないかと思われる。距離感はあれど、そこを埋めるようにしていけばどうとでも付き合っていけるものだ。だから敗者というつもりはありません、壊してもいいと願って行動したのだから彼女自身も後悔はなかったでしょう。むしろそうするしか彼女の楽しみはなかったとも解釈が出来ますが、皮肉なことに夫から愛されていなかったわけではなかったのが彼女にとって唯一の不幸だったのか。

逆に言えば人生のどん底、家庭からも世間からも必要とされていない女性たちの方が苦しい状況に立たされていると見るべきだ。そして行き詰った世界から抜けだそうとして、衝動的に殺人を犯してしまった女性たちの話をテーマにした話題作があります。『OUT』と呼ばれる1997年に刊行されて、映画・ドラマ・舞台とメディアミックス展開を見せている今作は、紙の月とは比較にならない女性たちの葛藤が描かれている。

むしろ紙の月を見た後、それか前に今作を見ると生ぬるく感じてしまうかもしれません。どのような作品なのか、こちらも簡単にあらすじからさらっていこう。

作品概要

今作を初めて知ったのは、筆者がまだ10代前半の頃だ。相当ハードな内容で、ドラマや映画がやっていたことも薄っすらと耳に入っていたがとても子供が見に行くような作品ではないので興味関心というものはあまりモテなかった。それもそのはず、何せ内容がひょんなことから仲良しグループの女性4人の一人が夫を衝動で殺害してしまい、死体処理の手伝いをさせて証拠隠滅を図ったことにより、平穏無事な日常が崩れ去っていくという話です。子供ながらにとんでもない内容だと思ったものだ。

こちらの作品も様々なメディアミックス展開をしているものの、内容や登場人物などは共通しているので一貫してのあらすじから先に見ていこう。

あらすじ

郊外にある弁当工場にて勤務している雅子・ヨシエ・邦子・弥生の4人はそれぞれ家庭内での問題を抱えていた。誰もがいつまでこんな生活を続けなくてはならないのか、そんな疑問を感じながらも、4人で仲良く過ごしている間だけは楽しくしていられた。家庭内崩壊している雅子、寝たきりの姑と娘の三人で苦しい生活をしているヨシエ、買い物依存症から脱却できずに借金を繰り返している邦子、工場内では珍しい美人で二児の子持ちの弥生。

ある日雅子がいつもどおり過ごしていると、弥生から電話がかかってくる。取ると泣きながら話す内容は、ギャンブル依存症でDVを振るっていた夫を衝動的に殺害してしまったというものだった。突然の告白に驚きを隠せない雅子、だがこれまで理不尽に耐え続けた弥生を救うためにヨシエと邦子を巻き込んで弥生の夫を解体してばらばらにして証拠隠滅を図る。警察にバレるも、彼女たちが容疑者にあがることはなく、そのままやり過ごせると思っていた。けれどそれが彼女たちの日常という均衡を完全に狂わす狂気の始まりとなってしまうのだった。

追い詰められた主人公たち

今作で活躍するのは女性4人が主題になっています、それぞれが家庭に問題を抱えており、かつてはそれほど苦しい生活をしていなかったにも関わらず、様々なしがらみによって追い込まれてしまっていた。人生最悪、そう呼んでも良い彼女たちはいつかこんなクソッタレな世界から脱出したいと考えていた。だからこそ我慢できた、いつかまたこうなると希望を持っていたのは、メンバーの中で一番若かった弥生その人。

子供も小さく、しかもお腹の中に新しい命を宿しているせいもあって彼女の人生を壊すなんて出来ないという点から一致団結するのです。けれど先にも話したように、1人の人間を解体して殺人事件があったとなれば、そこで動くのは他でもない裏社会に属していた人たちが、彼女たちへと魔手を伸ばしていくのだった。

実際にあった事件

すごい話と思うことなかれ、現実には本当にバラバラ殺人事件が起こっているのだ。今作のモデルになったとも言われているのが1994年に起こった井の頭公園バラバラ殺人事件だという。参考にしたというが、実際の事件では指紋はキレイに剥がされており、更に内臓器は長さや大きさに関係なく20cm単位で切り分けられ、全身を計27つのポリ袋にしまって隠蔽するという、おぞましい事件が実際に起こっているのだ。筆者の知る限りでは数年前に起きた全く事件と無関係な18歳の専門学校生の女性が行方不明になって、後日頭部が足取りがつかめなくなったところからさほど離れていないところに、頭部が落ちていたという事件を思い出す。

何にしても平和だ平和だと語られる日本でも、こうした猟奇殺人が起こっているという事実を考えると空恐ろしくなる。OUTの世界観がまんざら非現実的ではない、そう言える話ではないでしょうか。